ポンポン船のエンジン
その昔、小型の動力船は「ポンポン船」などと呼ばれていた。エンジンがリズミカルにポンポンと音を立てていたからだが、その音を出していたのは「焼玉エンジン」と呼ばれる原初的なピストンエンジンだった。
焼玉エンジンはシリンダーヘッドにある球状の燃焼室がその名前の由来。点火プラグが不要であるなど原理的には現代のディーゼルエンジンの系譜にあり、石油ガスから重油まで幅広い石油燃料が使用可能な汎用性があった。そのため資源の枯渇した戦時中には植物油を用いる例すら見られたという(さすがに出力は下がるが)。
また始動時にこそちょっとした儀式めいた技が必要だったが運転時には特段の手間を要しなかったことは、少人数で乗り組む小型船のエンジンとしての普及に大きく貢献した。
20世紀初頭から戦後にかけての時代には当たり前に用いられていたこの焼玉エンジンだったが、技術の進歩につれて置き換えが進み、気が付けば現存する可動個体は国内でわずか数台しかないなど、今はほぼロストテクノロジーと化しているらしい。
当然ながら焼玉エンジンを現役でいじった世代もほとんど引退しているため、実機を保存する各地では定期的な運転イベントの開催などを機会とした後継者の確保も重要になっている。



