徒然月記

岡三リビックの広報誌「岡三マンスリー」の編集者によるコラムです。
徒然なるままに、多ジャンルの様々な事柄に関する雑学的知識が綴られています。

2023年度

『ニューメディア』だった頃

いまや個人が世界と繋がる情報空間「インターネット」。これは決して突然現れたものではなく、その黎明期のような時代があった。

1980年代、デジタル情報は総じて「ニューメディア」と呼ばれ、情報アクセスには今でいうローソンLoppiのような機械「キャプテンシステム」が使われた。
インフラを整えた電電公社(現NTT)の旗振りのもと国内の様々な企業や自治体が情報提供を行っていたが、そのサービス内容は天気予報や相場情報に始まり、観光案内、通販、銀行振込、列車予約、競馬オッズ確認などなど、現在にも劣らないものだった。
面白いのが、バーコードを読み取ることで瞬時に目的の情報に飛ぶ仕組みなども検討されていたこと。まさに今のQRコードそのものだ。

しかし、いかんせん通信環境がアナログのため、上り75・下り4200ビット秒と5G携帯の1/1000レベル。またアクセス先ごとに画面の使い勝手が異なるなど不便が多かった。
システム機器が数十万円からすることも含め個人利用には敷居が高く、一般には「役所や商店街の一角にある情報端末」どまり。最盛期でも契約件数は十数万件程度であったとされている。

集合的記憶違い?

「集合的記憶」とは、ある集団が共通の経験を通して心に刻む記憶のことだ。戦争の体験しかり、人気テレビ番組しかり、この記憶は、人々をひとつのグループとして団結させる力を持つ。しかし、それは時々エラーも起こすらしい?

「えっ、この状態からでも入れる保険があるんですか?」というフレーズを聞いたことがあるだろうか。ピンチでどうにもならない状況を冗談めかして使う言葉だが、その元ネタだったというテレビCMがどこにも見当たらないとして都市伝説化している。
「それ見たことがある」という人は意外と多い。車同士の衝突や、家屋の倒壊など、いくつかのパターンがあったという。前述のフレーズはまさに事故に巻き込まれそうな寸前に時間が止まり、そこで人物の口から発せられるという趣向で、ここから言葉が独り歩きしたとされる。ただ、せいぜい2~30年前のCMといわれながら、少なくともネット上にはその痕跡が何ひとつ残っていないため「見た」という人全員の記憶違いの疑いが浮上している。

一説には、誤解を生む表現のため徹底的に世の中から封印されたとも。どなたかもし昔の録画テープ等でこのCMの実物を発見したら、ぜひ公表をお願いしたい。

電動モビリティって?

 昨今、車両区分の見直しで注目を浴びている電動キックボード。だがその区分けがややこしくわかりづらいので、周辺事情も含めて整理してみた。

・電動キックボード
【原付】ナンバーや保安装置を付けたもの。免許が必要。出力別で原付一種・二種両タイプあり。
【特定小型原付】ナンバーや保安装置を付け時20km/h以下のもの。免許不要。
【特例特定小型原付】ナンバーや保安装置を付け時速6km/h以下のもの。免許不要。特例車を示す灯火を出せば歩道走行可。

・電動アシスト自転車【普通自転車】
時速24km/h以上で動力補助が切れるもの。保安装置付き。ナンバー、免許不要。

・モペッド【原付一種・二種】
形が自転車風でも、ペダルをこがずに走れたり時速24km/h以上でも動力補助があるものは原付扱いとなるため、免許やナンバーが必要。速度を抑制した特定小型原付タイプを開発しているメーカーもあり、これであれば免許は不要。

・キックボード【玩具】
保安装置がないと車両扱いにならないため、人通りのある公道では使用不可。

むしろ非動力の普通のキックボードが合法化されれば、都市部のご近所歩きには結構手軽で便利なのだが…

何が何して何とやら

【問】 次の( )に入る言葉を記せ
1 能ある鷹は(    )
2 喉元過ぎれば(    )
3 噂をすれば(    )
4 一寸先は(    )
5 人の振り見て(    )
6 勝手知ったる(    )
7 雨降って(    )
8 (    )の銭失い
9 虎の威をかる(    )
10 井の中の蛙(    )
11 好きこそものの(    )
12 人の噂も(    )
13 (    )の皮算用

【答】
1 爪を隠す、 2 熱さを忘れる、 3 影が差す、4 闇、 5 我が振り直せ、 
6 他人の家、 7 地固まる、 8 安物買い、 9 狐、 
10 大海を知らず、 11 上手なれ、 12 七十五日、 13 取らぬ狸

ゴミ拾いはスポーツだ!

ボランティア活動でゴミ拾いを計画している人は、絶対検討すべき新しい潮流、それが「スポーツゴミ拾い」だ。ゴミ拾いという行為にチーム競技の要素を加え、より積極的にゴミ拾いに参加してもらえる場にすることが最大の目的となっている。

1チーム最大5人で、制限時間内にできるだけ多くのゴミを集める。最終的に集めたゴミの重さで得点を競うが、ごみの種類によって掛ける係数が異なり、特にたばこの吸い殻は他のゴミよりも高めに設定されている。ただし根本的にはごみ拾いなので、選り好みして得点の高いゴミ以外を無視したり、自宅のゴミをわざわざ持参して得点に加味するのも当然NGだ。

十数年前に始まったこの試みは既に海外にも広がりを見せており、今年は何と、日本国内はもとより世界各国で予選が執り行われたのち、11月に日本で決勝が開かれるのだという。
日本発祥スポーツということで誇らしくもあるものの、日本のゴミを外国の方に拾って頂くというのはしのびない気持ちもある。いっそのこと各地で勝手連チームを結成し、開催日までに日本の路上のごみを一掃してしまうというのはどうだろうか(笑)。

マーガリンは悪玉?

「マーガリンは健康に悪い」という話をよく聞く。その製造工程で発生する「トランス脂肪酸」という物質が悪玉コレステロールを増やし心臓疾患などを引き起こす要因になるとされていて、WHOもトランス脂肪酸の1日の摂取量を全カロリーの1%未満にするよう勧告している。

この問題が最初に浮上したのはアメリカからで、アメリカ人は今もトランス脂肪酸を日々2%近く摂取しているらしい。一方で日本人平均は0.4%程度とされ、そもそもマーガリンでいえば1日で1箱使い切るような勢いでもなければ1%には至らない。
トランス脂肪酸はマーガリンに限らず肉類、乳製品、植物油など様々な食品に含まれていて、欧米人の食卓ではその積み上げがとんでもないレベルになっているというわけ。

しかしマーガリン業界もただ傍観してはいない。その製法に改良を重ね、なんと今ではバターに含まれるトランス脂肪酸の量すら下回る製品が普通になっているという。こうなるとバターの方がコレステロール量など含め身体に悪いという話にすらなってくる。
もはやマーガリンだからと使用を避ける意味は薄れている。結局は食事全体のバランスが肝要ということだ。

工場で作る家

昨年、東京・銀座からひとつの名建築が消えた。「中銀カプセルタワー」という、ユニット構造により建物の拡張や改築を容易にする「メタボリズム思想」を体現したワンルームマンション(黒川紀章設計・1972年竣工)だったが、残念なことに拡張や改築のないままに老朽化で解体となった。

一方、より現実的な形で当時の住宅市場に登場したのが「セキスイハイム」という名の、一件の戸建てを複数の箱ユニットで構成する工業化住宅だった。1970年に開催された住宅産業の展覧会で、積水化学工業社のブースだけ開催日が迫っても基礎があるだけ。そこに突然トラックが数台やってきてあっという間に上棟し他社の度肝を抜くという衝撃デビューを飾った。施工工程の9割が工場というハイムは手頃な価格もあってすぐに人気を獲得した。

ハイムはメタボリズムからさらに踏み込み、ユニット再生やモデルハウスの移築販売など、容易に分解可能であることを活かしたエコなサービスも後に展開。世界的に見てもここまで商業的に成立した工業化住宅は稀だという。
ただ、最近販売している商品はユニット構造であることを極力消したデザインが多いようだ。私などはいかにもユニットですと明快に主張している最初期のスタイルが恋しいのだけれど。

賢いのは日本だから?

カラスはとても賢い。横断歩道にクルミを落として、自動車に踏ませて割ったあと歩行者信号が青のうちに食べたり、公園の水飲み場で水栓を器用にひねり、水飲みは少量、水浴びは大量と調節して使うなどの頭脳プレーがたびたび報告されている。

人間社会に近くてもスズメやハトでこうした事例は全くない。カラスは雑食ゆえか様々な食べ物を自ら試し、探すために、脳の記憶や学習を司る部位が非常に発達しており、その脳重量は体重比で犬猫を凌駕するともいわれる。むろん好奇心が仇となることもあるが、そこはカラスならではの集団性が強みとなっている。危険なものは退け、良いと思ったものはどんどん広げるコミュニティが、種の存続をより確かにしている。

ところで、海外でも枝を使って虫の巣穴をほじくるなどの頭脳プレーの報告がなくはないが、日本ほどではないようだ。日本では袋でゴミを出す方式が多いためこれを狙うカラスが都市部に多く、単純に目撃情報が多いせいもある。しかし我が家の近所のカラスはゴミ集積所の防鳥ネットをくちばしで払って中に潜り込む技を最近になって覚えており、毎日の生活が刺激に満ちた日本のカラスがやはり知性で一枚上手なようだ。

県境飛び地あれこれ

・和歌山県北山村
国内で唯一、自治体全体が飛び地になっていて(面積約48km2)、しかも三重県と奈良県に挟まれている。すぐ西には同様の形で和歌山県新宮市の飛び地(面積約三・五平方㌖)もある。

・兵庫県伊丹市小阪田(伊丹空港)
伊丹空港の敷地は大阪府池田市と豊中市、兵庫県伊丹市が入り乱れ、飛び地の中にある飛び地もある。ただ名目上の境界はあっても空港管理は一体的なので、特に不都合なく運営されている。

・熊本県荒尾市上井出・本井出
かつて農業用水の利便を図る見返りに福岡県大牟田市に荒尾市の飛び地ができたという。県境の個人住宅では固定資産税は面積案分で双方に払うそうだ。

・東京都練馬区西大泉町
埼玉県新座市の住宅地のなか一街区だけが練馬区となっている。練馬区は当該地区に新座への編入を進言したが、住民の反対で現状維持となったという。

・東京都稲城市矢野口(よみうりランド)
遊園地「よみうりランド」は東京都・神奈川県境に立ち、飛び地となる部分にはかつて巨人の練習場があった。練習場に窃盗が入った際の捜査は警視庁と神奈川県警の綱引きから始まったという。

歴史上の船あれこれ

サンタ・マリア号(1492年)
全長約19m 重量約150t
コロンブスが新大陸を発見した船だが、探検中のバハマ諸島で座礁したため、大砲も含め現地の要塞陣地の部材にされた。帰路は随伴した僚船を使った。

ビクトリア号(1519年)
全長約20m 重量約85t
マゼランは世界一周へと5隻編隊で出発したが、最後まで生き残ったのはビクトリア号と乗員18名だけであった。

サン・ファン・バウティスタ号(1613年)
全長約55m 重量約500t
伊達政宗の命により国内で造られた西洋式帆船で、二度の渡欧航海をこなし、日本の船大工の技術力を証明した。

メイフラワー号(1620年)
全長約30m 重量約180t 
アメリカへの清教徒移民を乗せた道中に疫病が蔓延し、130人いた乗員と移民が最後は半分になっていたという。移民上陸後に船はイギリスに帰った。

サスケハナ号(1850年)
全長約78m 重量約2490t
当時最新の蒸気船軍艦(帆走も可能)として対日砲艦外交に寄与したペリーの黒船。だが皮肉にも一番の活躍どころは自国の南北戦争だった。

芸術は皆のもの

昨年、芸術家・岡本太郎の回顧展が各地で巡回開催された。「芸術は爆発だ!」という氏のフレーズはあまりにも有名だが、とどのつまりは喜び・怒り・悲しみ・不安といった感情の起伏をそのまま作品にぶつけているということだ。
彼は決まり切った結果や打算的な行いを嫌い、常にそれを打破することを信条とした。今も万博公園に残る代表作・1970年大阪万博のモニュメント「太陽の塔」は元々、巨大な平屋根に覆われたイベント広場に置く作品として依頼されたが、屋根を「作為的な抑圧」と捉え、これを破るデザインをあえて提示して、最終的に屋根に大穴を開けてそびえ立つ姿となった。

彼は自分の作品がコレクターの邸宅に仕舞われて人目に触れなくなる事を嫌い、売って生計を立てることをしなかった。その代わりに公園のモニュメントや、コップから飛行船まで多種多様なデザインをこなし、ついには冒頭のフレーズをテレビのCMで叫ぶほど芸術という存在を広く一般の人々に届けることに心血を注いだ。

彼の作品で最も特異なものが、名古屋の寺院「久國寺」の釣鐘だ。除夜の鐘の時には一般の人も突けるそうなので、世にも珍しい「音を出す太郎作品」を体験してみてはいかがだろう。

終末時計の行方

第二次世界大戦後の世界は、常に核戦争の恐怖と隣り合わせでした。原子力に関わる科学者は平和利用をその理想に、1947年の学会誌で「世界終末時計」と呼ばれるカウントダウン途中の時計の絵を発表して危機感を表明しました。最初は「世界の終末まで七分しかない」と設定されましたが、実際50年代のうちに二分台にまで早まる程の緊張状態でした。

その後この時計は旧ソ連崩壊後の1991年に17分前と最も後退しましたが、近年は多くの国が核を持つようになったこと、また指標に気候変動なども盛り込むようになったことで針が止まらなくなり、以降は進む一方。最新の発表では1分30秒前にまでなっています。

そもそも気候変動対策は全世界が意識をひとつにしないと解決しない問題です。国家間のいざこざが続けば時計は進むばかり…

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