徒然月記

岡三リビックの広報誌「岡三マンスリー」の編集者によるコラムです。
徒然なるままに、多ジャンルの様々な事柄に関する雑学的知識が綴られています。
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2018年度

ユニバーサル文字

2018.06

 目の不自由な人のために作られた触る文字「点字」。19世紀にフランスで生まれた「ブライユ式」と呼ばれるものが世界的なアルファベットのスタンダードで、日本ではこのブライユ式を基にひらがな用に転換したものが明治の中頃から使われている。
しかしながら点字は健常者には縁遠い存在で、普通の文字とは全く別に扱われるのが常であった。

 だが、そうした慣例を打ち破るアイデアが、日本の若いデザイナー、コウスケ・タカハシ氏によってもたらされた。点字の配列の上にうまく文字の線が乗るようにしたフォント「ブライユ・ノイエ」を考案し、点字とアルファベット、点字とカタカナを同じ場所に書くことを可能にしたのだ。この点字の再発明とも呼ぶべきトピックは、世界からも大きな注目を浴びている。

 これを使えば一般用と点字用に別々の説明板を用意せずとも済み、また子供は誰でも同じ本を楽しめるだろう。タカハシ氏自身はこれは、東京五輪に向けたユニバーサルデザインの試みだとしている。もしかしたら2年後にはこの文字、大きな飛躍を見せているかも知れない。

ドイツは遊びも職人技

2018.05

 ドイツのハンブルグ市に「ミニチュアワンダーランド」という、世界最大とされる鉄道模型の展示館がある。
だが、線路総延長15kmともいう巨大ジオラマで運転される何百もの列車や建物は市販品がベースのものも多く、失礼を承知で言えば趣味の延長に見える。ここの凄いところは実は、一般に鉄道模型では風景の一部となる車や船が列車以上にハイテクで、それをスタッフが自力開発している点にある。

 ジオラマ上の道路を埋める数万台の車は全て個別に動く。みな交差点の信号を遵守して止まるだけでなく、電池が減ると裏方に引っ込み充電してまたジオラマに戻る行為まで含めて完全自動化されている。部屋を暗くした「夜」の情景で全車ライトを灯すのはもちろん、「昼」にも一部の車はライトオン主義だったりとこだわりも細かい。
白眉は船のモデルで、実際に水に浮きつつ、自位置や周囲の船との距離の判定に常に超音波を発して航路を外れないようプログラミングされ、港への接岸の様子なども完全再現している。

 こうして日々のジオラマ運行にはほとんど人手がいらない一方で、その運行システムと展示空間は随時改良と拡張を重ねており、開発スタッフは100人を下らないのだそうだ。

国産鉄橋のはじまり

2018.04

 東京・深川の富岡八幡宮脇の堀跡に架かる小さな鉄橋「八幡橋」。気づかずスルーしそうなくたびれた感じの橋だが、架橋から140年と国内に現存する鉄橋としては大阪市の「緑地西橋」についで2番目に古い。
皇居馬場先門から東に伸びる道にあった「弾正橋」が鉄橋として架けられたのは明治11年のこと。その後この橋の廃橋に伴って昭和4年、深川に移設され、幅を切り詰めた人道橋として第二の人生(橋生?)を歩むことになったものだ。

 この橋で使われている鉄はこんにち橋梁用で一般的な鋼鉄(スチール)ではなく、鋳鉄と錬鉄(アイアン)。まだ八幡製鉄所も釜石製鉄所もない時代に国産鉄材を用いた橋の国内最古の事例だ。
全体的には機能美ある佇まいのなか国章である菊紋が側面部の装飾として用いられているのは、恐らく設計製造した政府工部省による国産品アピールなのだろう。工部省製の工作機械などにも同様に菊紋付きのものがある。

 かつて艀(はしけ)で溢れていた橋の下の堀は今は埋められ遊歩道として再整備されているので、上からも下からもじっくり観察しやすい状態なのが嬉しい。

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