徒然月記

岡三リビックの広報誌「岡三マンスリー」の編集者によるコラムです。
徒然なるままに、多ジャンルの様々な事柄に関する雑学的知識が綴られています。
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2019年度

女性のレース

2019.10

 今年、レースの世界にひとつの大きな動きがあった。女性F1ドライバーの排出を目指す国際レース「Wシリーズ」がこの5月からヨーロッパで始まったのだ。女性がレーサーになる敷居は低くなったものの、まだF1のレギュラーシートにまで到達した者はいない。その目標に向け世界から集ったドライバーが同一条件のマシンで戦うのがWシリーズ。21歳の日本人・小山美姫もここに名を連ねており、期待が膨らむ。

 そんなレース界で過去最も頂点に近づいた女性といえるのはドイツのミッシェル・ムートンだろう。公道を舞台に戦う世界ラリー選手権でのことだ。
 1970年代から個人で国際格式ラリーに参加し実績を重ねた後、1981年に30歳でアウディチームに加入。この年さっそく初優勝を果たすと、翌82年には12戦中3勝を挙げるなどで年間ランキング2位に躍進。同じチームでランキング3位のワルター・ロールのポイントとの合算により、この年アウディはチームタイトルを初めて獲得した。

 男勝りの激しい気性と黒髪から「黒い火山」ともあだ名され、ラリーやオフロードの様々なレースで名を馳せた彼女だが、今ではこれらのイベントを主管する国際自動車連盟の役員となり、Wシリーズを含む女性のレース活動を支えるために走り回っている。

日傘と帽子

2019.09

 ここ数年「日傘男子」なる単語で男も夏は傘を差したらどうか、といった提案がニュース界隈だの環境省だのから頻繁に聞かれるが、その努力むなしく実際にやっている人をほとんど見かけない。
 しかし男が日傘を使わないのにも、ひ弱に見られるとか、手がふさがる、通勤の雑踏では邪魔者扱いになるので差しづらい、等色々理由はある。

 そもそも日傘を使う習慣は世界的に日本だけが突出していて、欧米ではむしろ長いバカンスを伺わせる日焼けが余裕ある生活の証だそうだが、近年の異常な暑さに対して何らかの対策があった方が良いのは確かだろう。
 そこで改めて思い起こすのが帽子というアイテム。サザエさんの磯野波平がそうであるように、かつてはサラリーマン誰もが帽子を着用していた時代があったが、なぜか、いつの間にか、ほぼ消滅してしまった。帽子なら傘ほどではないにせよ、頭が直射日光にさらされることは避けられる。

 帽子を着こなしている人といえばパナマ帽の麻生太郎大臣か。マフィアっぽくはあるがダンディさは参考にしたい。帽子自体にも新しい発想を持ち込み、機能性衣料のような通気性や手入れのしやすさを備えつつデザインもビジネス向きなものが積極的に開発されれば、日傘よりもっと手軽に使える男の夏アイテムになるのではないだろうか。

変な楽器

2019.08

 ゴールデンウィーク某日の朝5時15分、富山駅前にいた。立山まで行く始発電車に乗るためだ。ところが駅では既に登山客など多くの人々が列を成しており、完全に出遅れたと知る。

 気を取り直して6時台の二番列車で立山駅へ。目的地・黒部ダムへは更にロープウェーやケーブルカーなど幾つも乗り物を乗り継いでいく。その道中、トロリーバスのトンネル内には青い照明に照らされた区間があるが、ここが悪名高い「破砕帯」だ。ダム建設の資材運搬ルートとして計画されたこのトンネルの工事を毎秒600Lもの大量の湧水が阻み、80mの掘削に実に7か月を要したという。

 ダムサイトに着くと、天気はド晴天。雲が近く、実に気分爽快だ。雄大な峡谷に巨大な現代彫刻のようなダムが佇む荘厳な風景に圧倒される一方、工事全体で171人もの犠牲を生んでも完遂した先人たちにはただただ平伏する思いだ。ダム脇に殉職者慰霊碑を見つけ手を合わせた。

 ひとしきり色んな角度からダムを眺めまわしその威容を堪能した後はレストハウスへ行き、ダム湖と同じ緑色をした名物ダムカレーでひと息。黒部ダムの観光放水は6~10月とのことで今回は見られず、ライスに穴を開けてのルゥの放水で我慢となった。

変な楽器

2019.07

 世の管弦楽曲の中には、一般的な楽器編成に飽き足らず電子楽器や民族楽器など様々な音と共演させたものがある。さらには、楽器とは呼べないものまでも…

アンダーソン作曲「タイプライター」
せわしないタイピング作業の情景をリズミカルに表現したこの楽曲。実際にタイプライターを使う時は、楽団の最前に座ったタイピストが寸劇的な動きとともに演奏することが多い。

チャイコフスキー作曲「1812年」
ナポレオンのロシア侵攻を題材とし、クライマックスでは大砲を用いる。一般のコンサートではその音をバスドラムで代用する例がほとんどだが、陸上自衛隊の基地祭などでは実際に榴弾砲を使っての演奏を聴くことができる。

ラヴェル作曲「スペインの時」
時計屋が舞台のオペラのため、時を刻む音を3台のメトロノームで表現する。メトロノームでは「100台のメトロノームのためのポエムサンフォニック」という凄い曲もあるが、これは逆に他の楽器を使わないので管弦楽ではない。

サティ作曲「パラード」
詩人ジャン・コクトーが脚本を、ピカソが舞台美術を担当した豪華スタッフによるモダンバレエの曲。タイプライター、サイレン、抽選器(ガラポン)、空き瓶など様々なものを使って騒々しい情景のさまを表現している。

空飛ぶニセ侍

2019.06

 太平洋戦争敗戦後の日本では、二度と戦争を起さぬよう進駐軍が兵器類をスクラップにしたため、例えば戦場を舞台にした映画を作るのも困難で、話を人間模様だけに絞ったり兵器をミニチュアやラジコンに頼る時期が長く続いた。

 ところが、太平洋戦争の口火となる真珠湾攻撃を描いた昭和45年の映画「トラ・トラ・トラ!」は、驚くべき方法で日本の航空部隊が再現された。日米合作ゆえ予算が潤沢で、九七艦攻・九九艦爆・零戦という三種類の空母艦載機を、姿かたちの似た米軍機をもとに胴体や翼を切り張りして「本当に飛べる偽物」を造ってしまったのだ。しかも3機種各々5機、ワンカットに最大15機もの機影が入る豪華な絵作りが可能となった。
 こうして撮影された空母発艦から真珠湾攻撃へと至るシーンは、本物の飛行機でなければ不可能な空気感と臨場感をこの映画にもたらすことに成功した。

 しかし米軍がやられ放題な内容からアメリカでの興行成績は振るわず、過大な投資とされた15機はその後、ハリウッドの戦争映画にやられ役で何度も登板する羽目となった。映画製作から50年経ち飛行可能な個体が漸減した現在も、航空ショーで米軍機相手のやられ役を引き続き演じ続けているという。もはや時代劇のベテラン斬られ役の域だ。

恐怖のパンデミック(大流行)

2019.05

 あなたやあなたの家族の頭にフケが気になった時、実はそれはフケではない可能性を疑っておこう。

 文明国となって久しい日本でにわかには信じられないことだが、髪の毛に紛れて棲み、人の血を吸いつつ毛に卵を産み付けるという「アタマジラミ」が最近その勢力を伸ばしている。このシラミの卵がぱっと見、フケのような感じなのだ。
 ある推計によれば国内で年間50万人の感染者がいるといわれ、特に近年は海外からの観光客と一緒に渡来している疑いもあるらしい。

 アタマジラミが面倒なのは、一カ月ほどの生息期間に卵を100個は産む脅威の繁殖力を持ち、またクッションやタオル等を介して容易に転移すること。遊びを通してのスキンシップの多い子供らとその家族での流行が特に多い。

 その対策には殺虫剤メーカーから出ているシラミ用シャンプーが効果的で、これはどこの薬局でも買うことができる。ただしシャンプーが効くのは成虫だけ。卵は目の細かいくしですいて少しでも多く除去しつつ、卵からかえった成虫をシャンプーで撃退するダブル戦術が必要だ。我が家にもこのシラミは襲来し、3週間は格闘する羽目になった。

人と映像の境

2019.04

 東京・お台場で開催されているデジタル映像の展覧会「チームラボ・ボーダレス」が人気だ。作品をただ見るのでなく、観覧者の動きに反応して変化する映像を楽しむ双方向イベントとしてとても「遊びごたえ」がある。
クリエーター集団「チームラボ」は2011年の初個展以来その表現や技術を年々バージョンアップさせながらこうした展覧会を開いてきた。まさにデジタル時代の「進化する」アートだ。

 子供らの一番人気は、自分が描いた魚や亀をスキャンするとそれが壁面の大スクリーンの中を泳ぎ始めるデジタル水族館。熱帯魚にもこんな色はないだろうという派手な色使いの魚たちが所狭しと泳いでいる。
大人は会場中央の大空間に流れる滝(の映像)に惹かれるだろうか。流れている水の上に立つと、自分を境にちゃんと水が二手に分かれるのが凄い。
これら様々なテーマの部屋全てが投影映像でシームレスに繋がり、順路のない迷路空間を自由に行き来できるのが会場の特徴となっている。

 ちなみに、お台場からほど近い豊洲でも「チームラボ・プラネッツ」と呼ばれる別テーマの展覧会が開催されているので、表現の違いなどをチェックしてみては。

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