人工岩実績が「全建賞」受賞
信濃川水系湯川上流に位置するこの「隧通し」は岩盤を湯川の急流が削って穴を開けた天 然のトンネルで、穴の大きさは高さ約6m、長さ20m。今も絶えることなく水がトンネルを通して流れており、四季折々の自然の美しさを感じられる名所です。
しかしこの隧通し周囲の岩盤は風化と浸食が進み、一部には崩落も発生。大規模な崩壊が 発生した場合、河道を閉塞しこれの決壊による下流域の氾濫などが懸念されました。そこで国土交通省松本砂防事務所では平成27年から補強工事が開始されました。
当該個所はまず崩落を防ぐためコンクリート擁壁で岩盤を固めタイロッドや鉄筋で補強、これに元々あった自然の岩盤を再現するため当社の人工岩「ロッキーステージ」及びモルタル吹付「斜面いろどり工法」をその表面に施工しています。
周辺一帯は中部山岳国立公園特別地域(第 2 種)に指定されていることに加え、トンネル とその周辺の岩盤には国の特別天然記念物である球状石灰石が分布しており、工事の行為そのものに細心の注意を要するものでした。そのうえで、白骨温泉は多くの訪問者が訪れる 観光名所のため、景観対策の方策について地元と懇談会等を重ねて進めたこと、現地景観との一体性を高めた造形工事、崩落の危険もある崖の工事での安全に配慮したことが高く評価されたということです。
「当社も同工事の業務で表彰」
人工岩ロッキーステージの施工にあたっては、まず3次元地形図から岩の形状、地質、色 をフィードバックした縮尺模型を製作、これに往時の写真を参考にしながら崩落に至る以前の「隧通し」を再現するアレンジを加えました。この模型は現場にも持ち込んで形状面の 基軸資料としつつ、角礫岩に土石流堆積物が積層した複雑な岩盤の表情との違和感がない よう慎重に造形作業が進められました。
この工事を主管した国土交通省北陸地方整備局松本砂防事務所からは、「平成30年度優 良工事」のひとつとして施工会社のサワンド建設(株)が表彰されたほか、こだわり抜いた当社の人工岩業務も「優良工事における下請負者」として表彰を受けました。
去る7月26日には松本砂防事務所にてこの表彰式が行われ当社も参列、栄誉に授かりました。
「人気の露天風呂も再開」
隧通しが工事を終えたことで、すぐ下流に位置する公共露天風呂もこの 4 月に 3 年ぶり に再開。以来観光客で大賑わいとなっています。湯舟からは隧通しが目の前にあり、温泉場の観光資源として落石防止の措置と自然な景観が地元に強く求められてきた意味がよく理 解できます。国立公園の豊かな自然に囲まれた峡谷のせせらぎを間近に聞きながらの露天風呂は、その弱酸性の効能とともに心の洗濯にも効果大のようです。